青春×タイムスリップ
東京へ上京してちょうど1年が経った日の夜、仕事を終えた若久拓哉はいつものように最終電車で自宅からの最寄り駅を降りる。疲労でぼんやりとしながら近くの神社にふと立ち寄ると、突然不思議な光に包まれて……。「そうだ、俺にはこの数年間ずっと後悔していることがあるんだ」彼はかつての青春時代に生まれた後悔と向き合い、それを乗り越えることができるのか。
ストーリー
- 第1章:プロローグ
- 午前0時32分、俺を乗せた最終電車が自宅の最寄り駅に到着する。今日は終電に乗れたけど、仕事が終わらずにタクシーや始発電車で帰ることも少なくない。さっき31日を越えたから、3月が終わって4月になった。毎日記......【続く】
- 第2章:新クラス
- 今日は珍しく目覚ましのアラームが鳴る前に目が覚めた。部屋から出てリビングに行くと、母さんはちょうどご飯を作り始めたところだった。「俺」はまだぐっすり眠っている。……今日は大事な始業式なんじゃないのか。......【続く】
- 第3章:変化
- 明日でゴールデンウィークが終わる。こっちに来てから仕事はなく、ウィークを通り過ぎてゴールデンイヤーに突入している俺にはまったく関係のないことだけど。今日は服を買いに行きたい。だけどそのお金がない。3週......【続く】
- 第4章:2人の視点
- 普段この時間は数学の授業を受けている。でも今日は違う。授業だけが詰まったモノクロの1日もこの日ばかりは幾分か彩られて見える。福岡市立中央高校の文化祭がついに始まった。この学校では2日にわたって文化祭が......【続く】
- 第5章:やってみる
- チャイムが試験の終了を告げる。ようやくだ。「はぁ、やっと終わった」そうため息をつくと、後ろからも同じようにため息が聞こえてきた。「ほんとにやっとだよ……。私、高校生活で一番勉強して試験に臨んだかも。前......【続く】
- 第6章:分岐点
- 終業式が終わった。明日から夏休みだ。と言っても、受験生の夏休みはほぼ夏季課外で埋め尽くされているけど。誰もいない放課後の第二講義室。俺は窓を開けて、席から校庭を眺めていた。もう一度この5日間の出来事を......【続く】
- 第7章:最後の夏休み
- 夏休みが始まって早12日が経った。夏休みといっても、夏季課外で毎日登校しているからその実感はあまりない。みんな一気に受験を意識し始めるようになって、塾に行く頻度を増やしたり、放課後に教室に残って自習した......【続く】
- 第8章:俺の後悔
- お盆の最終日。暦の上ではもう秋になるらしい。それでもここにはまだどっかりと夏の暑さが居座っている。することがない。時間を持て余すとたいてい小説や漫画を読んで過ごすけど、今はその気も起きない。仕方ないし......【続く】
- 第9章:つながり①
- 久しぶりのスーツは着心地が悪い。2年前に大学の入学式で袖を通して以来だ。揺れるバスの中で、窓に映る自分の上半身をぼんやりと見つめながらそんなことを思った。車内には他にもスーツや振袖を着た乗客がたくさん......【続く】
- 第10章:つながり②
- 大濠公園での出来事から1カ月半が過ぎた。いつの間にか季節は秋に移り変わって、外は肌寒くなっていた。勉強に追われて、学校でも以前ほどみんなで話す機会がない。だけど、高宮と野間は随分と自然に話せるようにな......【続く】
- 最終章:終わりと始まり
- ここしばらく奇妙な夢を見る。神社の前に俺と「俺」が立っていて、そこにあのぶち猫が現れる。それからこっちにタイムスリップしてきた時みたいに、あたりが青白い光に包まれていく。光の中では神社の扉だけがぽつん......【続く】