大晦日が終わるまでに清算したいことがある。

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――受験もう近いよね。私は思うように成績が上がらなくて、もっと勉強しなきゃいけないのわかるでしょ。だから、悪いけどしばらく美沙とは会えないし、連絡くれても返せないと思う。

別に痛みはないのに、まるで胸がギュッとしぼられるような錯覚がする。こうして思い返してみても当時の自分は酷薄だった。高校時代にとても仲の良かった友達がいたのに、その言葉を最後に彼女と疎遠になってしまった。

彼女と仲良くなったのは高校3年生の夏だった。たまたまクラスの係が同じになったことから次第に話すようになり、会話の内容もただの業務連絡から部活のことや昨日見たテレビ番組の話へと、ちょっとずつバラエティーが豊かになっていった。

――ねぇ、連絡先交換しようよ!

彼女からそう打診されたとき、内心かなり驚いた。彼女は学校の外でも私と連絡を取りたがっているのだ。そう考えると少し嬉しくなった。そして、すぐに私はうんとうなずいた。

お互いの連絡先を交換したとき、私たちは正式にクラスメイトから友達になったように感じた。

彼女とのやり取りは毎日続いた。しばらくして休日に2人で出かけるようにもなった。もともと気が合うだけあって、学校の外でも彼女と一緒に過ごす時間はとても楽しかった。

それから冬に差し掛かって受験が山場を迎えた。彼女はもともと優秀な生徒で勉学においては何も問題がないようだった。一方の私は勉強の要領が悪く、どんなに参考書と向き合ってもなかなかそれが点数の向上につながらなかった。

そんな折、模擬試験の結果が返ってきた夜に彼女からある連絡が来た。

――明日、よかったら少し出かけない? たまには息抜きでも!

今思うと本当に情けないことだけど、その時の私は余裕のある彼女の様子にとてもいら立って、即座に冒頭の返事をしてしまったのだ。

2人の距離が離れたまま私たちは卒業を迎えた。私は東京の大学に進学することになっていたから、それっきり彼女と会うことはなかった。

本当にやろうと思えば仲直りをする機会はあったんだろうけど、当時の私は今さら彼女に近づくのが怖くて何もしなかった。あれから時間が経って、もうこのままでいいかと思った時期もしばらくあったけど、やっぱりずっと気にはなっていて、できれば何とかしたいと思い続けていた。

社会人になって1年半が経ち、人付き合いや理不尽にまれる中でようやく私にも責任感と勇気が備わってきた。

――30日に高3の時のクラスみんなで同窓会しようと思うんだけど、夏希も来ない?

2週間ほど前に高校時代の友達から連絡が来て、私はすぐに行くと返事をした。そこに美沙も参加するらしい。

人でごった返す夜の大通りを左へ曲がる。同窓会の会場となる居酒屋が見えてきた。

明日を過ぎればもう今年が終わってしまう。その前に過去を清算して、願わくばまたあの頃の関係を取り戻して新年を迎えたい。まずはしっかりと謝って、それからまた仲良くなりたいと正直に自分の気持ちを伝えよう。今日はそれができる気がする。

私はごくりとつばを飲み込むと、グッと腕に力を込めて居酒屋のドアを押し開けた。

【終わり】


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