ある男女の謎について関係者にインタビューしてみた。

  1. トップページ >
  2. Twitter×短編 >
  3. 24作目

【保険会社で働くある事務員の話】

私の記憶が正しければ彼と千代が出会ったのは高校2年生の時だったわ。彼が東京からうちの高校に転校してきて、私たちと同じクラスになったの。

だけどおかしかったのが、千代はその日のうちに彼と付き合い始めたのよ。

普通そんなことある? 何だか気になっちゃって、何度か探りを入れてみたんだけど詳しいことは全然わからなかったの。彼は一目れして告白したの一点張りで、千代の方もそれ以上のことは何も言わなかったわ。

でも、私からしたら彼は一目れとかするタイプじゃなさそうだし、千代だって知らない人に告白されていきなりオーケーするとは思えないのよ。2人はきっと何か隠してるわね。

【ある父親の話】

急な転勤で息子が高校2年生の時に引っ越さなければならなくなった。それが分かった時は俺も落ち込んだよ。どうやってこのことを家族に打ち明ければいいのか。特に息子は友達と離ればなれになることを悲しむだろうし、まったく知らない九州の地で上手くやっていけるのか不安にもなるだろう。

予想通り、息子はしばらく落ち込んでいた。だけどある日、九州での詳しい勤務地を伝えてやると途端に表情が明るくなったんだ。それからは引っ越し先はこの辺がいいとか、せめてあの辺にさせてくれとか、やたらと住む場所に口を出すようになった。結局、できるだけ息子の希望に応えたが、あれはなんだったんだろう。

【アパレルショップで働くある店員の話】

思い返してみると、彼が転校してくる1週間くらい前から千代は機嫌がよかった気がするわ。それに前から転校生が来ることを知っていたみたいなの。

千代は先生から聞いたなんて言ってたけど、たまたま先生とすれ違った時に転校生が来るって本当ですかと尋ねたら、誰から聞いたか知らんがみんなにはまだ内緒だぞって逆にくぎを刺されちゃって。千代はどうして嘘なんかついたのかしら。

【ある母親の話】

昨日の夜、娘が急に小学校の頃のアルバムが見たいなんて言い出したから、押し入れの奥から引っ張り出して一緒に眺めたの。おかげで当時のことを色々と思い出しちゃった。

あの頃は娘に悪いことをしたわ。とある事情で引っ越さなければいけなくなって、娘はとても寂しそうにしていたの。特に仲の良かった男の子がいて、その子と離れるのが辛かったみたい。

娘は本当にその子のことが好きでいつもくっついていたの。ある時、私はこの人と結婚するのなんて口にしたときはびっくりしちゃったけど。

あら、そう言えば、昨日みたいにいきなり小学校の頃のアルバムが見たいって言い出したことが過去にもあったわ。確かあれは10年前、娘が高校2年生になる直前ね。ふふ、なるほど。今ならその理由がわかるわ。娘は知っていたのね。

【建設会社で働くある現場監督の話】

ああ、確かに俺は政樹と高校1年の時に同じ部活に所属していた。

高校1年の時っていうのも、2年に上がる前にあいつは福岡に引っ越しちゃったからな。あんな中途半端なタイミングで引っ越しなんて、さぞかし本人も嫌だろうと思っていたけど、意外にあいつは満更でもなさそうなんだよ。

それで、俺たちと離れるのが寂しくないのかって冗談交じりにいてみたら、もちろん寂しい、ただ向こうに昔の知り合いがいるから、その人に会えるのがちょっとだけ楽しみなんだって返されてな。

小癪こしゃくだったからその人のこと色々と訊いてやろうとしたんだけど、詳しいことは何も教えてくれなかった。ふん、まったく面白くないやつめ。

【小学校で働くある教諭の話】

もう20年も前のことだから詳しいことはあまり覚えていないけど、確かに2人は仲が良かった気がするわ。幼なじみらしくてね。家も近いからよく一緒に登校していたはずよ。

だけど、2人が小学2年生の時、残念なことに千代ちゃんが福岡に引っ越すことになっちゃって。彼女が転校してからしばらく政樹くんは寂しそうにしていたわ。

あれからどうしているのかしら。ご両親同士の付き合いもあったはずだから、完全に縁が切れたわけじゃないと思うけど。また2人が顔を合わせることがあったらいいと思うわ。

【ある銀行員の話】

昨日、久しぶりに政樹やみんなと飲んだんだ。歳は取っても根本のところはみんな変わっていなくて、本当に楽しかった。

それで、話題はやっぱり2人が出会った時のことになった。そりゃあ転校してその日のうちに彼女を作るんだから、どういうカラクリなのかみんなが気になるのも無理はない。俺もその1人だ。

酒が回っていたこともあって、政樹はあっさりすべてを白状してくれた。あれには笑ったな。

考えてみると、あいつの家は高校からずっと遠かったんだ。俺はなんでわざわざこの学校にってずっと不思議に思ってた。その謎がようやく解けたよ。

【ある新郎の話】

本日はお忙しいところ、私たち2人のためにお越しいただきまして感謝申し上げます。

さて、この会場にいる何人かには昨日すでに話しましたが、みなさんに1つ白状しなくてはいけないことがあります。これまで言っていた一目れについて、あれは真っ赤な嘘です。申し訳ありません。

僕は昔から千代のことを知っていました。父の転勤が決まっておおよその勤務先がわかってから、僕はSNSを通して彼女と連絡を取り、できるだけ千代の近くに入れるよう調整を続けてきたのです。

毎朝、泣きたくなるほど早い時間に起きて、わざわざ遠い学校まで通っていたのも彼女と会うためでした。

こんな事情があったので、僕はこの事実を誰にも伝えられませんでした。千代にも内緒にするよう頼んでいました。知られたらドン引きされてしまうことは火を見るよりも明らかです。

だけど今、それを秘密にする必要がなくなりました。僕の願いがすべて叶ったのですから。そして千代も、小学生の頃に母親を仰天させた結婚宣言を現実のものにすることができて誇らしいと申しております。

これにて僕の告白はおしまいです。本日は日ごろよりお世話になっているみなさまへ感謝をお伝えしたいと思い、ささやかですが席を設けさせていただきました。短い時間ではありますが、お楽しみいただけたら幸いです。

【終わり】


作品を読んでいただいたみなさまにお願いがあります。今後も執筆活動を続けていくため、どうか投げ銭をしていただけないでしょうか。

当サイトではAmazonギフト券とPayPayからオンラインで投げ銭を受け付けております。もちろん個人情報を入力いただく必要はなく、アカウントに登録した個人情報がこちらに通知されることもありません。どうかよろしくお願いいたします。

投げ銭が難しい場合でも、もしよければページ下部のSNSボタンから本サイトの拡散にご協力いただけると大変助かります。


一覧へ戻る

トップページへ