男女6人でテーブルに座ったら勉強会が暴露大会に発展した。

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学校帰りに近くのファミレスで男女6人が1つのテーブルに座った。

「このメンツで勉強会をするなんて思わなかったわ」

クラス委員の木本が教科書をめくりながら俺に向かって言った。

「ああ、まさか本当に実現するとは」

「まあ人が多い方がにぎやかでいいじゃん?」

焼けた肌と笑った時に見せる白い歯のコントラストが印象的な野球部の中島は、どうやらこの場を楽しんでいるらしい。

「勉強会ににぎやかさを取り入れてどうするんだよ」

「そう言うなって。せっかく鈴木も来てくれたんだから。俺は驚いたぞ。女子とか苦手そうだし、てっきり来ないと思ってたぜ」

鈴木はキョロキョロと視線を変えながら控え目に言う。

「別に苦手じゃないんだ。ただ、どう接すればいいかわからないだけで」

「立派に苦手じゃないか」

その時、女子バスケ部のお調子者である百田が元気に右手を上げる。

「はい! それではここで私からの問題です!」

「まだ場も和み切ってないのによく切り込めたな」

「数学と国語、私はどちらから勉強を始めればいいでしょうか!」

「知らないよ」

「…………」

「ほら、佐藤は呆れて一人で勉強始めてるぞ」

彼女が小さな声でぼそりと答える。

「……大丈夫、これでも私は楽しんでるよ」

「まじか」

「それよりまさか木村と木本が仲いいとは思わなかったぜ。この勉強会だって2人のおかげで実現したんだもんな。よっ! モクモクコンビ!」

「モクモク?」

「うん。どっちも名前に木の字があるからモクモク」

「センスのかけらもないネーミングね」

佐藤がふふっと吹き出した。その反応に俺はびっくりさせられる。

「木本のツッコミがツボに入ったのか!?」

「……いや、木村と木本って、2人でどんだけ木の漢字入ってるのって思って」

「ツボ地味だな」

「確かに! 村にも本にもあるから全部で4つか。モクモクモクモクコンビ!」

「もう響きが気持ち悪いよ。それよりさっきから全然勉強が進んでないぞ」

「えっ、勉強会っておしゃべり会のコードネームじゃなかったのか?」

「ひどいコードネームだ」

「はい! じゃあ私から2つ目の問題です!」

「国語から勉強すればいいと思うよ」

「いや終わらせようとしないで! それでは2問目、鈴木くんの好きな人は誰でしょうか!」

「えっ、僕!?」

「ナイス質問!」

「悔しいけどそれは俺も気になる」

しかし、鈴木はうーんと困ってもじもじするだけで、一向に口を開こうとはしない。

「えーい、じれったいわね。それなら私から行くわ」

「おお、さすが我らのクラス委員だ! いけいけっ!」

予想外の展開に俺まで気持ちが高揚こうようしてくる。そして、木本は本当に言ってのけた。

「私は7組の志野くんが好きなのよ」

「えぇーっ!」

5人が一斉に声を上げた。

「……木本が、ちょっと意外」

「うんうん、私も驚いちゃった!」

「お前意外と面食いなんだな」

「うるさいわね! イケメン好きの何が悪いのよ。じゃあ次は」

「はい! 次は私が言います!」

「えっ、なに、これ暴露大会みたいになってんの?」

「いいじゃない。いっそのことみんな言っちゃいましょ!」

「ふふふ、私は男バスの灰田先輩が好きなのさ!」

「出たー、みんなのあこがれ灰田先輩!」

中島が右手で両目をおおいながら大げさなリアクションを取る。

さわやかだし優しいしかっこいいし、灰田先輩いいよねー!」

「でもあの人、女ぐせが悪いってうわさもあるぞ」

「あぁ、たまに聞くよね。でも私は先輩はいい人だと思うんだけどなぁ」

「あんなのモテない男たちがひがんでるだけよ。実際、女子の間でそんなこと言ってる人は誰もいないわ」

「おっ、さすがイケメンハンターだ! 灰田先輩もチェック済みとはな」

「ぶっ飛ばすわよ」

「じゃあ次は羽奈の番かな。どうする? 言っちゃう? 言っちゃう?」

百田の腹の立つ振りを受けて、佐藤はちょっと考えてから申し訳なさそうに言った。

「……私は、まだ好きな人ってよくわからない」

「あー、まあそうだよなぁ」

意外にも中島があっさりとそれを受け入れる。

「……でも、中島くんみたいに明るくて元気な人は結構好き」

「…………」

「いや、お前ガチ照れすんなよ」

「だって、今のはずるいって。誰でも照れるって」

「さて、これで女性陣は言い終わったわ。次は男性陣の番よ」

木本が腕を組んで満足げに言った。

「ああ、もちろんだ。ここまでされたら俺も黙っているわけにはいくまい」

「あら、珍しく木村がやる気になってるじゃない」

「まあな。それでは僭越せんえつながら男子諸君の先陣を切らせていただく。俺は同じクラスの坂本さんが好きだ」

「あんたさっきはよく私のこと面食いとか言えたわね」

「違う。顔で決めてるんじゃない。俺は彼女の持つ純情な感じが好きなんだ」

「……坂本さんって確か5組の山下くんと付き合ってるよね」

「やめろ。暴露した瞬間にハートブレークかよ」

何とか気丈にふるまいながらも、実は結構ショックだった。

「まあまあ。元気出しなさいよ。私たちがなぐさめてあげるから」

「そうだよ! みんなでカラオケとか行ってパーッと遊ぼうよ!」

「ああ、これから毎日遊ぶ。みんな付き合ってくれ」

勉強会だったはずなのに、なぜか勉強からどんどん離れていく。

それからみんなの視線は中島に向いた。次は彼の番だということだ。

「そうだよなぁ、俺も言わなきゃだよな」

中島はその日、初めて困った表情を見せた。

「実は、俺も佐藤と同じで好きな人とかよくわからないんだよな」

「おい、ずるいぞ!」

何も言わずに無傷で帰らせてなるものか。俺は半分ヤケクソになっていた。

「ごめんごめん。むしろ言えたらいいんだけど、ぶっちゃけ野球楽しいし、男友達といるのも楽だし、今で十分楽しんでるって言うか。あんまり好きな人とか考えることないんだよな」

「……わかる」

佐藤も彼の言うことに賛同する。ちょっと残念だが、こうなってしまっては仕方ない。

「くぅ、是非もなし。ならばいよいよ最後の鈴木か」

「はぁ、そうだよね」

鈴木は深呼吸をすると意を決したのか眉間みけんにしわを寄せて言った。

「僕は百田さんが好きだ」

「えっ!」

他のみんなは驚きのあまり反応できず、そう声を出したのは当の百田一人だった。

「私!? 私なの!?」

「もちろん返事はしなくていいよ。今ので誰か好きかわかったし」

一番に中島が反応を見せる。

「お前かっこいいよ! それが言える勇気すごいと思う。俺、鳥肌立ったもん!」

「俺もすごいと思った。正直、俺だったら好きな人はいないってごまかしてたかも」

「私も、バカにしてたわけじゃないけど、見直しちゃったわ」

「……今の、よかった。私だったら嬉しいと思う」

「あはは、みんなありがと」

「…………」

鈴木が照れ笑いをする一方で、百田はずっと黙ったままだった。

「それじゃあ、そろそろ出る?」

彼が気を利かしてそう提案する。百田を除く俺たち4人はそれぞれお互いの様子を見ながら、恐る恐るうんうんとうなずき合った。

「ちょっと待って!」

百田がようやく口を開く。場にピリッと緊張が走るのを感じた。

「じゃあ、付き合ってみる?」

彼女の言葉に、みんなが集団行動のごとく一斉に鈴木を見る。

「えっ、それってどういう……」

「えっとね、うん。今の鈴木くんの言葉、めちゃめちゃ嬉しかったんだ! それで灰田先輩のことは好きって言ってもただあこがれてる部分も多くて、それなら鈴木くんのこともっと知ってみたいなって思ったの! ダメかな?」

「そりゃあ、もちろんいいけど。えっ?」

自分が何か勘違いをしているのではないかと怖くなったのか、鈴木は返事をしながら「え? え?」と自問自答を繰り返していた。

「よかった! それじゃあこれからよろしくお願いします!」

「こ、こちらこそよろしくお願いします」

いまだに夢か現実かの判別がついていないみたいに当惑する彼の肩に中島が腕を回す。

「やったな! 今日はこれから祝杯だ」

「結局、勉強はほとんどしなかったわね」

「まあでも、いいんじゃないか」

「……意外。木村くんのことだから絶対ツッコミを入れると思ってた」

「俺はそういうキャラになってるのか」

佐藤がまたふふっと笑った。

「ねぇ、私の祝杯は!? もちろん私の祝杯もしてくれるんだよね?」

「仕方ない、ついでにしてやるか!」

「やったー!」

「ついでなのはいいのかよ」

店に入る時は不安もあったけど、出る時はすっかり居心地がよくなっていた。

もともとこの勉強会を木本に提案したのは俺だ。これといった目的があったわけじゃない。何となく、彼女と話をしたついでにいてみただけだった。

多分、ちょっと青春っぽいことをしたい気持ちがあったんだろう。結局、俺自身はただ失恋をきっするだけに終わってしまったけど、それを差し引いても、今日の集まりはとても楽しかったと思う。

【終わり】


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