大学で気になる異性ができて、告白すべきかどうか悩んでいたところ、中学からの友人である優香がたまたまキャンパス内を歩いていたから、とっ捕まえて相談してみると下記のとおり返事が返ってきた。
「50パーセント」
「え、なに? 今日の降水確率?」
我ながらアホな返答をしてしまったと思う。
「告白の成功率よ。一般的に告白の成功率は約50パーセントだと言われてるの」
「へー、よく知ってるね。50パーセントか。シビアな数字だなぁ」
「中途半端よね。背中を押すでも足かせになるでもない数字だわ」
「もうちょっと勇気の出る数字はないの?」
「75パーセント」
「いいじゃん! ほとんどの人が傘を持って出る確率よ」
「降水確率ひっぱるわね」
「スルーされたのがちょっと悔しくてね。それで今度は何の確率なの?」
「とある調査によると深夜0時から朝5時の間に告白した人の75パーセントが成功しているらしいわ」
「やったね! って言いたいところだけど、そんな時間まで2人きりでいるような仲じゃ成功率が高いのも当たり前かなぁ。でも、よく聞く終電逃しちゃった作戦は確かに効果的なのかもね」
「これに関しては18時から23時の間が一番成功しやすいって書いてる記事もあるし、そんなに当てにならないかも。ただ昼より夜の方が成功率は高いと思うわ」
「ありがとう、なんか勇気でた! 他にいいデータ知ってたりする?」
「そうねぇ。アメリカの調査によるとフィラデルフィア空港が最も愛の告白に適しているそうよ」
「それは実現できねぇよ」
「空港って意味なら、旅行に行く前や行った後は告白するのにいいタイミングだと思うわ」
「確かにいつもよりテンション上がってそうだし開放的にもなってそう」
「そうそう。あとは、そうだ、紗希はその男子と知り合ってどのくらい経つの?」
「えーっと、2ヶ月くらいかな」
「そしたらちょっと急いだほうがいいかも。大体、知り合って3ヶ月以内が上手くいく時期らしいわ。鉄は熱いうちにってやつね」
「熱ければいいけど、まだ熱してるかどうかわからないなぁ」
「女は加点方式、男は一発面接型が多いと聞くわ」
「どういうこと?」
「その人と付き合えるかどうかって話で、女は時間をかけることで興味のなかった人でも基準点を越えるようになることがあるけど、男は最初でダメだと思われたら結果を覆すのは相当ハードルが高いのよ」
「私、彼と最初に出会った飲み会で酔っぱらってかなりやらかしたのよね……。もう終わってるのかしら」
「骨は拾ってあげるわ」
「それ応援する言葉じゃないからね」
「まあ男は性格より外見を重視する傾向があるし、何より最後は告白してみないとわからないわ。ただ、男に対してもう少し仲良くなってから告白しようってのはそこまで効果ないかも」
「そうね。このままくよくよしててもどうしようもないし、この際きっぱり言ってしまおうかしら」
「その意気よ。ちなみに言うと告白をして後悔したことがある人は20パーセントだったのに対して、告白をしないで後悔したことがある人は50パーセントもいるらしいわ」
「うん、なんかめっちゃ勇気出てきた! ちょっと待ってて」
私はポケットからスマホを取りだして電話をかける。
「えっ、ちょっと、何してるの?」
「これから告白するの!」
「いや、私の話聞いてた!? せめて夜にしなさいよ、今ど昼間じゃない! 大体あんたはいつも人の話を聞かずに勢いで行動するところが――」
まくし立てる優香は今にも火を吹き出すんじゃないかと思われた。と同時に彼が電話に出て、まずは突然の電話を謝ってから、彼が今、話せる状態かどうか確認する。
彼の了承を得て、私は自分の想いを伝えた。いきなりで驚くだろうけど好きです。付き合ってください。
しばらく彼と話してから私は電話を切った。すぐに優香が結果を尋ねてくる。
「どうだったの!?」
「とりあえずもうちょっとタイミングがあるだろって怒られた。向こうはトイレしてたらしい」
「ロマンチックのかけらもないわね」
「でもいいよって」
優香はもう何が正解かわからないわと深いため息をついたあと、お祝いに私の好きなショートケーキをごちそうしてくれた。
【終わり】