第19話:Having a crush on her.(彼女が好き)

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冬休みが明けて数週間が経ち、今度はもうすぐやってくる春休みに向けて心が軽やかになってきたころ、俺は三明に呼ばれ、廊下の奥にある人通りの少ない階段のすみにいた。

「今から大事な話を始める」

表情だけはいやに真剣だ。それはともかく、今のもったいぶるような前置きが何だかしゃくさわった。

「早くせんと昼休み終わるぞ」

「まだ15分もあるやろ。少しは興味を持て」

「どうしたんだよ」

「麻生に協力してほしいことがある」

「何を」

「今週末、デートすることになった」

「おお」

「反応薄いな」

「これでも割と驚いてるぞ。それで誰となん?」

「行徳さんだ」

「えぇ!?」

「こっちに驚くんか」

「意外に身近な人だったから」

以前から部員との会話の中で、気になる異性として咲を挙げていたところ、昨日の部活帰りにたまたま彼女と帰る時間が重なり、部員の冷やかしに乗せられた三明はその場でデートに誘ったのだそうだ。

「まさかオーケーされるとは……」

「情けないこと言うなよ」

その結果に彼自身も驚いたらしい。

「勢いで言っただけあって見事にノープランだ」

「でもオーケーされたんやけん脈はあるんやない?」

「どうやろうなぁ。週末に2人で出掛けようとしか言ってないから、向こうがデートと思ってくれてるのかさえ怪しい」

「難しいな。それで協力ってのは俺にデートの相談を」

しゃべっている途中から、彼は何を言っているのかわからないとでも言いたげに目を細めてくる。

「……じゃなくて陽菜への相談の橋渡しになって欲しいってことか」

「さすが理解が早い!」

「なんか腹立つな」

「頼む! 俺にはお前しかいないんだ!」

いささか不満はあったが、だからと言ってここで協力しないのは友人として仁義にもとる。俺は橋渡しとしての任務を受けることに決め、後日、部活終わりに陽菜を交えて作戦会議を行うことにした。

「本日は私のためにこのような場を設けていただき誠に嬉しく思う」

部室ぶしつにやってくるなり三明は即行でおふざけに入った。

「礼には及ばぬ。我々はただ三明殿の幸せのために全力を尽くしたいのである」

「のである」

陽菜とシャーロットもノリノリだ。この場にシャーロットがいることは三明も了承済みだった。

「それは有難い。しかし」

三明が顔を上げる。

「学食2回分というのは少し高くないか?」

「2回にしないとシャーロットの分がないじゃない」

俺の分はないのか?

「あんま金ないんだよな」

「嫌ならいいとよ?」

「おごります。おごらせていただきます」

三明はあっけなく降参して大人しく席に座った。

「それで、もう大体のことは俺から陽菜に伝えてるけど」

俺が言うと彼はうんとうなずいた。

「さんきゅ。それで、許斐さんには俺の考えたデートプランについてアドバイスが欲しい」

「待ってました!」

陽菜が上機嫌に言う。

「やけに楽しそうやな」

「どうせ陽にはこの楽しさはわからないよ」

それからシャーロットの方を向いて、2人で「ね!」と頷き合った。

「周りに腹立つやつしかいないな」

「それで、咲とどこに行くつもりなん?」

陽菜がくと、三明はコホンと咳払いをして説明を始めた。

「朝10時に駅前に集まって、水族館、ペットショップ、猫カフェ、動物園、最後に映画だ」

「うん、ちょっと待って。動物多すぎない?」

「しかもあちこち移動するプランやな。俺が行徳さんだったら猫カフェの前に帰る」

俺たちの反応に三明が困惑する。

「えっ、でも動物が好きって聞いたけん」

「ここまで行くと当てつけの域だわ」

「ちなみに最後の映画って」

「実は最近公開されたイルカのドキュメンタリーが」

「もういい」

「He is joking, isn't he?(冗談で言ってるんだよね?)」

シャーロットが小声で俺にささやく。

「I'm afraid not.(残念ながら本気みたいだ)」

「Seems a long way to go.(道のりは険しいわね)」

「とにかく」

陽菜があきれ顔で三明に言う。

「デートの中身はこっちで考えるけん、デート中に何を話すかとか心の準備しといて!」

「そうだな。最初は調べた動物のうんちく語りまくるつもりやったけど、それも見直さないといかんよな」

「ちなみに動物好きって言っても咲が本当に好きなのは犬やけん。死にたくなかったら動物に頼るのはやめり」

それから陽菜はメモ帳を取り出して、スマホを片手に何かを書き込み始めた。

「それにしても三明が行徳さんを好きだったなんて知らんかった」

俺が言うと、三明は目に見えてはにかんだ。

「いやさぁ、俺もそれまで意識してなかったんやけど、1ヶ月くらい前に行徳さんが髪型を変えてから急に気になるようになって」

「急に気になるもんなんか」

「麻生はそういうのなさそうやな」

「うーん、ないかもなぁ」

「その人が夢に出てきてから、いきなり気になったりするよね!」

「さすがシャーロットさんわかっとる! ちょっとしたきっかけでな!」

「うんうん! それであとから、なぜ好きになったのかわからなくなる!」

「…………」

三明は穏やかな表情のまま、いやに遠い目をして黙り込んでしまった。

「それは言っちゃダメだ」

俺が呟くと、彼女も何とかしようと慌てて周囲を見渡した。

「いや、えっと……、It's just what happened to me. That's it!(ただそれが私に起こったってだけ。それだけよ!)」

「ほら、シャーロットもこう言ってるし」

「なんて言ったかわからねぇよ……」

「できたぁ!」

凍りかけた空気をものともせずに陽菜が歓声を上げた。

「おぉ、デートプランか?」

窮地を救われたような思いでホッとする。

「あぁ、よかったわ! さすが陽菜!」

シャーロットの安堵はひとしおだっただろう。三明も興味を持ったのか、チラッと顔を上げた。

「まあね、咲の喜ぶものなら知り尽くしとるけん。このくらいお茶の子さいさいよ」

「表現はしゃくさわるがでかした! ほら、三明もこっち来いよ」

三明が陽菜の作ったメモ帳に顔をのぞかせる。

「えっと、10時に駅前集合、カフェ1、昼ご飯、カフェ2、映画……」

「カフェが2つもあるだと?」

俺が疑問をていすると陽菜は得意げに顔を縦に振った。

「そうよ、2つとも最近できたばかりなの。どっちも捨てがたいわ」

「映画はイルカか?」

三明の質問に陽菜が「そんなわけないでしょ」と冷たく言い放つ。

「映画は別になくてもいいけん。ゲーセンとかでもいいと思う!」

「おぉ、格ゲーなら得意やん! 誰が相手でもフルボッコにできるぞ」

「デート相手をフルボッコにしてどうすんだよ」

「やっぱり大人しく映画がいいよ。ボロが出ないように」

「…………」

それからひとまず何も問題はないように思われていたが、デート前日になってちょっとした展開が起こった。

「なあ、みんな」

夕ご飯を食べ終わってちょうど自室のベッドに寝そべった時、三明からメッセージが来た。

すぐに「どうしたん?」と返事を打つ。

このやり取りは今回特別に創設されたグループチャット「三明の青春@フラれたら解散」の中でされているから三明の他にもいくつか既読がついた。ここには俺、陽菜、シャーロット、三明に加えて赤司も参加している。

「なんか急に不安になってきた」

「今更かよ、大丈夫だって(笑)」

赤司がすぐに返事をする。

「でも上手くいってる想像がつかん。許斐さんはいけると思う?」

「私はとにかく三明くんに楽しんで欲しいな!」

「ほら、全然答えになっとらん」

「ごめんって(笑) でもそればっかりはわからんもん」

「まあそうだよな。誰か現場で俺のサポートをしてくれないか?」

俺はその発言が気になって深堀りしてみた。

「サポート?」

「どっかで俺の行動を見守ってアドバイスして欲しい」

これは何だか面白そうだと思った。どうしてみんなが人の恋愛に首を突っ込みたがるのか、少しわかった気がする。

「私は明日予定あるから無理なんよ」

「すまん、俺も」

陽菜と赤司がそれぞれ残念がるスタンプと一緒に返事をした。

「面白そうやしいきたかったなぁ」

「ほんとそれな」

「いや、こっちは真剣なんですけど!」

2人が来れないとわかってどうしようか悩んでいると、シャーロットから返事が上がった。

「私は行けるよ! アドバイスできるかわからないけど(笑)」

すぐにポンと音がして「おぉ、良かった!」と三明の返事が表示される。

俺は彼女に乗っかることにした。

「役に立つかはともかく俺も行ける」

「この際、誰でもウェルカムだ! 枯れ木も山のにぎわいって言うしな」

「誰が枯れ木だ」

「すまん(笑) とにかく2人ともありがとう! 明日は予定通り10時に駅前集合からのカフェやけん、バレないようにこっそり見守っててくれると助かる」

「わかった!」

「了解」

シャーロットと俺がそれぞれ返事をしてグループの会話が終わった。それからゲームをしようとスマホのアプリを起動したところで、今度は陽菜から個人チャットで連絡が来る。

「陽がデートを見守るってなんかウケる(笑)」

「用件はそれだけか?」

「そうだよ!」

…………。

「暇人め。俺はやる時はやる男だ」

「はいはい。けど陽が恋愛に関わるって珍しいね」

「珍しいというか初めてやな」

「やっぱり! そっかぁ、ついに陽も恋愛に興味を持つようになったか」

「ただ何となく応援したくなっただけだよ」

「だいぶ前に誰かさんが言ってたけど、人が心から応援するのって自分の叶わなかった願望を誰かが叶えようとしてる時らしいよ?」

「うるさいな」

「ま、ちゃっかり陽の方もシャーロットと2人きりなんだし楽しんでき!」

「ちゃっかり言うな、たまたまだ。お前はすぐ恋愛に結び付けたがる」

「ただの応援よ。それじゃあ風呂入ってくるけん。おやすみ!」

「ああ、おやすみ」

画面を切ってスマホを横に置く。なんとなくゲームをする気にはならなくて、天井を見上げた。

言われてみれば確かに明日はシャーロットと2人なのだ。

そこから何か色々と考えてしまいそうになったから、思考を停止させようと布団の上に顔を押し付ける。結局、考えてもわからないことは考えないようにしていた。

「……時間と気力の無駄遣いになる」

俺は風呂に入ることに決め、ベッドから体を起こすとそのまま自室を出た。

デート当日、俺たちは少し早めに駅に着いて、構内を見下ろせる2階の通路から三明と咲が現れるを待ち構えていた。

「You always come just on time. Not eary but never late. I'm kinda impressed.(陽っていつもギリギリに来るけど、遅れることは絶対ないのよね。逆に感心するわ)」

手持ち無沙汰に耐えかねたのか、手すりに寄っかかりながらシャーロットが話しかけてくる。

「I'm lazy, but I don't like to make others wait.(基本だらしない方だけど、人を待たせるのは好きじゃないからな)」

「Things sometimes take more time than you expect. How can you manage to come as planned all the time?(だけど思ったより時間がかかることってあるじゃない。どうやっていつも予定通りに来てるの?)」

「I always check in advance. As for today, I used a train to come here. So, I searched the timetable yesterday and figured out what time I would have to get up.(いつも前もって調べてるんだ。例えば今日、ここには電車で来たけど、昨日のうちに時刻表を見ておいて何時に起きればいいか決めてたんだ)」

「You are diligent, ...partially.(真面目なのね、……そういうとこは)」

「Speaking of which, you always come early.(そう言えば、シャーロットはいつも来るの早いよな)」

「Yeah, I'm the one who always waits.(そうね。いつも私が待ってるわ)」

「I come early every now and then.(たまには早く来るようにしてるだろ)」

「Yeah, you come to school earlier than before.(確かにね。学校にも前より早く来るし)」

「Of course, I do.(そうだろ)」

「Is that because you want to talk with me?(ねぇ、陽が早く来るようになったのって私と話したいから?)」

「It's because you told me so.(シャーロットが早く来るよう言ったからだ)」

シャーロットはふふふと楽しそうに笑った。

「I didn't force you.(別に強制はしてないわよ?)」

「It's not like I dislike it anyway.(別に嫌なわけではないし)」

「Haha, that's what I like you about.(あは、陽のそういうところ好きよ)」

言葉に詰まる。少し悩んだのち、とにかく恥ずかしいのをごまかそうとそっぽを向いてつぶやいた。

「...Whatever.(……はいはい)」

彼女はつむじ曲がりの返事に呆れたのか「はぁ」とため息をつく。

「I'm not kidding.(冗談じゃないのに)」

しばらくそのままぼんやりと2人が来るのを待って、改めてスマホを確認すると時刻は10時10分を回ろうとしていた。

「Either of them doesn't show up...!?(どっちも来ないだと……!?)」

「Did we overlook them? There must be something wrong.(もしかして見逃した? 何かがおかしいわね)」

俺はすぐにグループチャットを開いて三明宛てにメッセージを送った。

「今、駅におるけどもしかしてもう行った?」

10秒ほどして、急に三明から電話がかかってきた。

「どうした?」

「やばい、寝坊した!」

「はぁ!?」

「今、急いで向かっとる!」

「デート当日によく寝坊できたな」

「最初は全然眠れんかったのに、一度寝たら爆睡とは我ながら驚いてる」

「アホか。それにしても三明はともかく行徳さんまで来てないのはなんでだ?」

「よかった、向こうもまだ来てなかったか。実は行徳さんも寝坊したらしい!」

「どんなデートだよ……」

それから三明は10分後に、咲は15分後に姿を現した。

「It seems they are having fun.(上手くいってるみたいね)」

「Yeah, the first cafe is just around the corner.(ああ、それにもうすぐ1つ目のカフェだ)」

楽しそうに話しながら前を歩く2人の姿を見て、シャーロットと俺はひとまず胸をなでおろした。その時、陽菜からグループチャットにメッセージが送られてくる。

「三明くんたちってもうカフェに入った?」

彼の方を見るが咲と話していてスマホを確認する様子はない。俺が代わりに返事を打つことにした。

「まだやけどもうすぐ着きそう」

「うわー、今バスケ部の友達といるんやけど、これからそのカフェに行こうってなっとるんよ」

「げっ、なんとか止められないか?」

「みんなが行きたいって言ってるから止めれん……」

「鉢合せたらまずいよな?」

「友達の性格やとめっちゃ騒ぎそうやもんなぁ。それでデートの雰囲気が壊れちゃうかも」

どうしよう。もうすぐ2人はカフェに着いてしまう。三明は話に夢中でスマホを確認する素振りはない。ここは、俺たちがなんとかするしかない。

「わかった、こっちで何とかする」

「さすが陽! そしたら私たちはこのままカフェに向かうね!」

調子のいいやつめ。俺はすぐにシャーロットに向かって言う。

「We have to stop them.(2人を止めなきゃ)」

「Yeah, should we just jump out and tell them not to go to the cafe?(そうね、一緒に2人の前に出て行ってカフェをやめるように言う?)」

「No, I'll go alone. It may seem strange to them that we are here together. I want to make it look natural.(いや、ここで俺たちが一緒に出たら奇妙に映るかもしれない。俺が行くよ。できるだけ自然に見せたい)」

それに、シャーロットと一緒に出て行ったら、咲の目には俺たちがデートをしているように見えるかもしれない。そんなの恥ずかしすぎる。

「I got it. Don't screw up.(わかったわ。ヘマをしないでね)」

シャーロットの言葉に俺はふっと笑みをこぼす。

「Like hell I will.(俺がすると思う?)」

もともと2人からある程度、距離を離して歩いていたし、目的のカフェはもう目と鼻の先に迫っていたから、思ったよりずっと急がなければならなかった。走りに走って、ようやく彼らと上手くはち合せられそうな交差点にたどり着く。

できるだけ息を整えて(あまり整わなかったけど)、俺は横から2人に向かって声をかけた。

「おぉ、三明やん! あと行徳さんも」

我ながらこの白々しさには寒気がした。

俺の顔を見た三明がびくっと飛び上がる。彼にとってはむしろ、俺が最もはち合わせるはずのない人だっただろう。

「え、どうしたん!?」

「いや、そこ歩いてたら2人の顔が見えたけん」

俺は走ってきたことをさとられまいと息が荒くなるのをできるだけ抑えてしゃべる。

「それでわざわざ走って来たと?」

咲が笑いながら尋ねてくる。まったく隠せていなかったようだ。

「あー、まあ、ちょっと色々あって」

「変なの」

「変かな? あはは……」

自分がものすごく滑稽こっけいに思えてくる。一方の三明はよほど驚いたようで、ただ口を半開きにして俺と咲が話すのを見つめていた。

「それより2人はどこ向かっとるん?」

「これから大名のカフェに行こうと思ってて」

「あぁ、最近できたところ?」

「そうそう、麻生くんも知ってたんだ」

「うん。そう言えば陽菜たちもこれから行くって言ってたな」

「え、許斐さんが?」

ここでようやく三明が反応した。

「うん。バスケ部の友達と一緒に行くんだって」

「そ、そうか。あー、それなら場所変えた方がいいかな?」

どうすべきか決めかねて、三明が困惑気味に咲に尋ねた。

「そうやね。多分、見つかるとあれこれ言いそうなやつが一人おるんよ」

思い当たる節があるのだろう。咲は少し笑いながらそう言った。

「あ、おっけ。えーっと、じゃあ、どこ行こう……」

三明が焦っているのを見て、俺はそっと耳打ちをする。

「もう一つのカフェがあっただろう。とりあえずそこ行っとけ」

「お、おう。そうやな。そこがあった」

それから俺はさよならを告げて、もといた方へ歩き出した。しばらくして振り返ると、また2人が楽しそうに会話をしている姿が見えてホッと胸をなでおろした。

「Things are going well so far.(今のところ問題なさそうね)」

彼らと同じファミレスで昼食を取りながら、シャーロットが嬉しそうに言った。三明と咲はカフェでしばらく過ごしたあと、市役所近くの公園をゆっくりと散歩しながら昼食の場所を探して、結局このファミレスに落ち着いていた。

2人がどんな話をしているのか、どんな表情なのかはよくわからないけど、少なくとも俺たちからは順調に進んでいるように見えた。

「Yeah, I was worried when he had to change his plan at the very beginning.(ああ、初っぱなから予定が狂った時は心配したけどな)」

「Ahaha, true.(あはは、確かに)」

「I wonder what they are talking about now.(今は何の話してるんだろう)」

「I wish I had some kind of eavesdropping device.(なんか盗聴できる機械でもあればいいのに)」

「That's scary.(怖いこと言うなよ)」

「But, you know, that is what we are here for.(でもさ、私たちってそのためにここいるんじゃない)」

「Is that what we are here for?(俺たち盗み聞きのためにここいるの?)」

「What else could it be. Ah, I can't stand. I'll try getting close to them.(それ以外ないでしょ。あぁ、もう我慢できない。近づいてみるわ)」

「Are you serious?(本気か?)」

シャーロットが背筋をピンと伸ばして敬礼のポーズをとる。

「I, Charlotte White, shall fulfill my duty. Allow me to demonstrate what I'm capable of.(私、シャーロットホワイトは課せられた使命を果たさなければなりません。僭越せんえつながら、この場で私の力量を証明させていただきます)」

席を立とうとするシャーロットの腕をすぐにつかんで引き留める。

「Wait. If they find us, it's over!(待て、バレたら終わりだぞ!)」

「That's not gonna happen. Besides, aren't you curious?(上手くやるわ。それに、陽は気にならないの?)」

「I'm damn curious.(めちゃ気になる)」

幸いにも2人の席はドリンクバーのすぐ近くある。俺たちは席を立つとドリンクバーへと向かいながら、上手く死角になるようわざわざ回り道をして彼らに近づいた。

一体、何の話をしているのだろう。席に近づくにつれ、徐々に彼らの会話が聞こえてくる。

「帰国子女とか?」

その声から咲が会話を楽しんでいるらしいことは推測できた。俺たちはドリンクバーが空くのを待つフリをして会話が聞き取れる距離に留まる。

「いや、海外に住んだことはないらしいぜ」

「へぇー、すごいね。てっきりアメリカかどっかで暮らしてたのかと思っとった」

つい声を出してしまいそうになるのを抑えた。これはもしかして、俺の話か?

「英語しゃべれるって初めて知った時はまじでびっくりした」

そう言って三明が笑う。

「三明くんはどうやって知ったと?」

「まだ入学してすぐの頃、クラスの係決めでシャーロットさんが困っとったんよ。その時にシャーロットさんを助けるためにみんなの前で英語しゃべったのが始まりやね」

「え、めっちゃかっこいいやん! そんな一面もあったなんて意外」

意外だったのか。

「そうなんよ、誰も係のこと説明できんでいたら麻生が代わりにしてくれてさ。いきなり席を立った時はこいつ何してんだろって思ったけど」

恥ずかしいことを思い出させないでくれ。

「Thank you back then.(あの時はありがとね)」

シャーロットが優しくささやいた。

「That was, that was not a big deal.(そんな、別に大したことじゃないよ)」

俺は何だかくすぐったくなるような感じがした。

ドリンクバーに人がいなくなって、その場にたたず名分めいぶんをなくした俺たちは名残なごり惜しくもここを離れることにした。

「I didn't think they were talking about you.(まさか陽のことを話してるなんてね)」

機械のボタンを押して飲み物を注ぎながらシャーロットが言う。

「Yeah, I was hoping for something romantic.(ああ、もっとロマンチックな話をしてたら面白かったのに)」

「I can see thousands of stars in your eyes.(君の目に何千もの星が見えるよ)」

「You are just seeing yourself there.(それはただ僕の目に映っている君の姿を見ているだけさ)」

三明たちに声が聞こえないよう気をつけながら、俺たちは互いの冗談に小さく笑い合った。すると、背後から耳馴染みのある低い声が聞こえてくる。

「ずいぶん楽しそうやな」

ギョッとして振り返ると三明が腕を組んで仁王立ちしていた。

「いつの間に、てか大丈夫なんか」

「お前らが盗み聞きしてるの見えたけんな。俺だけここに来たんだよ」

「バレてた」

シャーロットが苦笑いする。

「行徳さんにバレたらどうすんだよ! ただでさえ麻生は一度出くわしてんのに!」

「すまん!」

「ごめんなさい!」

俺は両手を合わせて頭を下げる。横目にシャーロットも同じく頭を下げたのがわかった。

「まったく」

不満そうにしながらもどうにか許してもらえたようだ。

「それにしても行徳さんと上手くいってるみたいやん」

俺がくと三明はすぐに目を輝かせた。

「それな! 苦しまぎれに振ったゲームの話題で意外に盛り上がってさ。行徳さん、結構ゲーム好きみたいなんよ!」

苦し紛れはともかく上手くいってるなら御の字だ。

「ところで、咲は?」

シャーロットの声に顔を向けると確かに彼女は席にいなかった。

「ああ、トイレに行っとる」

良かった。トイレは俺たちの席の方向にある。ここから移動するなら俺たちはちょうど咲の背後になったはずだ。

「……いや、それ戻ってくる時にばっちり見られるやん!」

「あっ」

三明も迫りくる危機に気付いて焦り始める。

「とにかく行徳さんの注意を引いて上手く俺たちを隠してくれ」

「急にそんなこと言われても」

俺はドリンクバーと俺たちの席の中間あたりで咲を待つよう三明に頼んだ。

「行徳さんが来たらしばらくそこで適当に話してくれ。その間に上手く回り込むから」

「わかった。やってみる」

三明を送り出した俺はシャーロットと近くの空席に座る。ちょうど席の側面に沿ってまっすぐ伸びる高さ1.5メートルほどの間仕切り壁が俺たちの姿を隠してくれた。ゆっくりと腰を上げて壁越しに三明の様子を見る。

「Can we sit here?(ここ座っていいの?)」

対面に座るシャーロットが声を抑えて尋ねてきた。俺は三明の方を向いたまま返事する。

「Taking some empty seats for a minute won't make a mess, I hope.(空いてる席にちょっと座るぐらいなら大丈夫だ、多分)」

「Oh, that's what you hope. Great, I'm so relieved.(何だか当てにならないわね)」

「This is happening because of you in the first place.(そもそも誰のせいでこうなったと思ってるんだ)」

「You totally agreed.(陽も賛成したじゃない)」

「Gee, you are right about that.(く、それは否定できない)」

ちょうどその時、咲が戻ってきて待ち構えていた三明と話し始めた。

「Let's go.(今だ)」

席から立ち上がる。目線の高さにあった壁は今はもう胸の高さほどしかない。咲が少しでも視線をらせばすぐに見つかってしまうだろう。

心臓の鼓動が速くなる。

走りたくなるのを抑えながら、一歩一歩、できるだけ咲から遠回りをして自分たちの席へと向かう。チラリと振り返るとシャーロットもちゃんとついて来てくれていた。

あと少し、もうすぐ2人を通り過ぎる。

その時、ガシャリと何かの割れる音が店内に鋭く響いた。

足が止まる。まずい、今ので咲の視線が変わってしまったか。

振り返ろうとする俺を横切って、すぐにシャーロットが俺の手を引っ張った。

そのまま彼女に率いられる形でもとの席へと戻る。

どうやら、事無きを得たようだ。

店をあとにした三明たちはてっきり当初の予定にあった1つ目のカフェに行くものとばかり思っていたが、後ろをついていくうちにどうやらそうでないことがわかってきた。

「Where are they going.(2人はどこに向かってるのかしら)」

「Yeah, the cafe is to the opposite way. It's not in our plan.(ああ、カフェは逆の方向だし。計画にないことだな)」

それから15分ほど歩いて、彼らが自動ドアを抜けて入った先はゲームセンターだった。俺たちも少し時間をおいて店内に足を踏み入れる。1階には多くのクレーンゲームが設置されているから、にぎやかな操作音があちらこちらから重なって聞こえてきた。

「It's only my third time coming here!(ここに来たのまだ3回目よ!)」

シャーロットが楽しそうにあたりを見回す。

「It's been a while.(俺も久しぶりだ)」

「Hey, I wanna try this!(ねぇ、私これやりたい!)」

クレーンゲームの中にあるぬいぐるみを指しながら彼女が言った。

「I tried something similar before and lost two thousand yen for nothing.(前に似たようなのをやった時は二千円を失ってしかも取れなかった)」

「I'll show you how to get them.(それじゃあどうやったらとれるか見せてあげるわ)」

「That sounds fun, but what about the two.(面白そうだけど、2人のことはどうする?)」

「Come on. We should enjoy ourselves. It won't take much time.(ちょっとくらい大丈夫よ。私たちも楽しまなきゃ)」

彼女は俺の手を取るとお目当てのゲーム機に向かって進んでいった。

さすが言うだけあって、風船ほどの大きさがあるぬいぐるみをわずか3回で落として見せた。

「You see?(どうよ)」

したり顔でぬいぐるみを俺の顔に近づけてくる。

「I saw enough. Take it away.(わかったから。それどけて)」

「I can take one for you if you want!(もし欲しいならどれか取ってあげるよ!)」

「I'll think about it.(考えとくよ)」

いつも以上にはしゃぐシャーロットの対して、俺はいつ咲にバレないかと冷や冷やしていた。

「2人ともなんでここおるん?」

だから、背後からその声が聞こえたときは心底、肝をつぶした。

「あ、赤司!?」

振り向いた先には訝し気な顔をする赤司が立っていた。

「驚いたのはこっちだって。三明たちの尾行はもう終わったんか?」

「いや、まだ終わっとらん。今は、えっと、休憩?」

休憩ってなんだよと笑われてしまう。

「赤司の方こそなんでここに?」

「部活のやつらと遊びに来てるんだよ。それよりもし三明たちもここいるならやばいぞ。見つかったら確実に茶化される」

「……さっきも似たようなの聞いたな」

なんでまたこうなるんだ。

「とにかく俺たちはシューティングゲームの方におるけん、そっちには近づかんがいいぞ」

「わかった。ありがと」

足早に立ち去る赤司を見送って、俺たちはすぐに三明たちを探すことにした。

「Can you go around the shooting games? I'll cover the other areas.(シューティングゲームの近くを頼んでもいいか? 俺は他の場所を探してみる)」

「Alright. I'll never let anyone get in!(わかったわ。絶対に誰も入れないようにする!)」

「...Please just focus on them.(……2人だけに気を付けてくれればいい)」

赤司たちが来ていることはグループチャットで知らせてはいたが、相変わらず三明からの返信はなかった。

探すこと5分。思いの外、簡単に2人を見つけ出すことができた。彼らは4階で音楽ゲームをやっている。

「They are in front of the elevator now. Seems they are going upstairs.(赤司くんたちは今、エレベーターの前にいるわ。どうやら上の階に行くみたい)」

シャーロットから連絡が入る。

「Thanks. We are on the fourth floor. Let me know if they get here.(わかった。今、4階にいるからもし赤司たちが同じ階にきたら教えてくれ)」

「I got it!(わかった!)」

それからちょっとして、彼らの乗ったエレベーターが3階で降りたと連絡があった。ひとまず安心だ。ふぅと息をついて顔を上げた視線の向こうで、エレベーターの中から降りてくる赤司たちの姿が視界に飛び込んでくる。

「Hey! They are here!(おい! こっち来たんだけど!)」

「What!? They must have been split!(え!? きっと分かれたんだわ!)」

しかも、よりによって向こうは一直線にこちら側に向かって歩いてくる。

あれこれ考える暇はない。俺はシャーロットにメッセージを送ると、すぐに三明たちを脱出させるべく行動に移した。

「……おお、また会ったな」

相手はやや困惑した表情で答える。

「……よお」

沈黙が怖かった俺はすぐに口を開いた。

「ここよく来るん?」

「いや、久しぶりに来たな。麻生は?」

「俺も1か月ぶりくらいかな。この階やったら音ゲー?」

俺の質問に「ああ」と頷く。

「前は結構やりこんでてさ。これからジュースかけて勝負するんよ」

「あんまりゲームやるイメージなかったけどな。赤司は」

こうして俺が足止めしている間、シャーロットが三明に電話して2人を退却させる手筈てはずになっている。

「なあ、麻生って9組の麻生よな? 英語しゃべれるっていう」

赤司の横に立つ長身の男が尋ねてきた。突然のことに俺はどう返事すべきか迷ってしまう。

「う、うん。そうやけど」

「俺のクラスでもちょっとうわさされとったぜ」

「そうなん? なんか恥ずかしいな」

反応にやや困りながら笑うと、相手も笑いながら「よろしく」と手を差し出してきた。朗らかで感じの良い男だ。

「俺は3組の中野。赤司とは同じ部活の友達やん」

「よろしく。放課後はいつも部室からそっちの掛け声を聞いとるよ」

「あはは、声出さんと怒られるけんな」

中野はそれより、と急に顔を近づけてきた。

「1つ聞いてもいいか?」

口元を緩めて、興味津々という表情を向けてくる。人がそういう顔をして何かを尋ねてくる時、それは決まってロクなことじゃない。

「うん、どうした」

「外国の人と付き合うってやっぱ違うんか?」

一瞬、何のことかわからなかった。

「シャーロットのことか!? いや、付き合っとらんよ」

「あれ? 違うん? そう聞いたんやけど」

「違うよ! まさか噂ってそれか!?」

中野はごめんと謝ったあと「ま、今度いろいろ話そうぜ」と言って赤司や他の友達と一緒に店の奥へと進んでいった。すぐにスマホを確認すると、シャーロットから三明たちが無事にゲームセンターを脱出したことを知らせるメッセージが入っていた。

シャーロットはゲームセンターを出てすぐのコンビニで待っててくれたから、俺たちはすぐに合流することができた。

「Where did they go?(2人はどこ行った?)」

「I think they went home.(帰ったと思うわ)」

「I see.(そっか)」

2人が帰る。それは三明が咲に告白することを意味していた。デートの終わりに咲を家まで送る途中で想いを伝えるのだと彼が意気込んでいたのを思い出す。

最初はそれも含めて一部始終を見るつもりでいたけど、朝から今まで三明のヘルプ要請が来ることはなかったし告白のシーンまで見に行くのはちょっと気が引けたから、ここで尾行を止めることにしていた。

他にすることもなかったから、俺たちはそのまま駅に向かうことに決めた。

「I hope it'll work out.(上手くいくといいな)」

「Yeah, I hope so too.(そうね)」

シャーロットが笑顔で答える。彼女は、自分の気持ちを素直に相手に伝えようとする三明の姿を見て何を思っているのだろう。

「Charlotte.(シャーロット)」

「What?(どうしたの?)」

「No, nothing.(いや、何でもない)」

何をどう言うべきかよくわからなくて、結局、諦めてしまった。シャーロットはちょっと笑って「Is that so.(あら、そう)」と返事をする。

俺はきたかった。ただ漠然と、男女が付き合うことについてどう思っているのか。それができないならせめて、シャーロットに男女の付き合いを意識させるような何かを言ってみたいと思った。

でも、それがどうしてなのかわからなかったし、どんな答えを期待しているのかもわからなかった。俺は恋愛において彼女の特別になりたいのか、その問いに対してもピンとくる答えはまだ見つからない。

俺はゆっくりと息を吐いた。顔を上げると雲のせいでオレンジにむらのできたあかね空がビルとビルの間からチラリと見えて、何だか一日の終わりを告げられたような気がした。

「1週間待った挙句あげく、やっぱり友達のままがいいってなんだよおおお!」

いつものように野球部の掛け声が聞こえてくる放課後の部室。その中で三明は身に起きた不幸を嘆いていた。そばにいた陽菜とシャーロットはどうすればよいかわからないようですっかり手をこまねいている。

「デート、盛り上がってたやん。楽しそうにしてたやん。期待してしまったやん!」

「……まあ、こればっかりは仕方ない」

涙目で訴える三明を前に、上手く彼をなぐさめる言葉がないかと探してはみたけど、どうしても「しょうがない」以外の言葉が見当たらなかった。

少し考えさせてほしい、という返事をもらって終わったデートから1週間が経った日の夜、改めて咲に呼ばれて落ち合った公園のベンチでごめんなさいと断られたらしい。

「みんなそろって同じこと言いやがって。俺はせば成るって言われて育てられてきたんだ。仕方ないことなんかクソくらえだ!」

「そんなこと言われてもなぁ」

「それじゃあもう一度、告白すれば?」

シャーロットの言葉に三明が「え?」と顔を上げる。

「嫌なら諦めないといいと思う!」

三明はしばらく考えていたが、やがて何かを決めたらしく、うんとうなずいて立ち上がった。

「そうだ、俺は一度フラれたくらいじゃ諦めん! これからも頑張って、俺がいい男だということを気付かせて見せる!」

「そうよ! 頑張れー!」

シャーロットも片腕を突き上げて応援した。

どうやら彼はまだ諦めないことに決めたらしい。そのせいで余計に傷つくこともあるかもしれないけど、俺はそっちの方が三明らしいと思った。

いずれにせよ、彼は告白したこと自体については後悔していないようだった。その事実は人知れず、静かに俺の心をおどらせていた。

ストーリーで使われた英語表現

※ストーリー中に使用された英語表現の解説をしていきます(ここでの解説はあくまでもご参考程度にお読みください)。本作品のストーリーとは無関係なので、興味がないという方や解説不要という方は飛ばしていただいて構いません!

今回は浅く広くでダーッとたくさん見直していきたいと思います!

「Seems a long way to go.(道のりは険しいわね)」

冒頭の「It」が省略されています。口語の場合、主語が明白な場合は略されることがあります。「a long way to go(進むのに長い道)」でまだゴールまでの道のりが長いことを示しています。

「How can you manage to come as planned all the time?(どうやっていつも予定通りに来てるの?)」

「manage to do」で「なんとか~し遂げる」という意味で、それに続く内容に難易度があることを示しています。「as planned」は「as it is planned(計画されたように)」の略です。「as」には続く主語とbe動詞が省略されて、いきなり過去分詞がつくことも多いです。

「Speaking of which, you always come early.(そう言えば、シャーロットはいつも来るの早いよな)」

「which」は関係代名詞の用法で直前に相手が話した内容を指します。「speak of」の「of」はここでは「~について」という意味になります。「~について」と言う場合、一般的には「about」ですが、これは慣用句的に「of」が使われます。

「I come early every now and then.(たまには早く来るようにしてるだろ)」

「every now and then」で「時々」を意味します。「every」をなくして「now and then」と言われることもあります。なぜ「時々」と言う意味になるのか詳細はわかりませんが、「now(今)」が現在を「then(その時)」が過去を表しています。

「Either of them doesn't show up...!?(どっちも来ないだと……!?)」

「either」は「どちらか、片方」を意味する単語ですが、否定で使われると「どっちも~ない」という意味になります。ちなみに「both(どちらも、両方)」は否定で使われると「どっちも~というわけではない(片方は大丈夫)」と言う意味になります。

「Yeah, the first cafe is just around the corner.(ああ、それにもうすぐ1つ目のカフェだ)」

「around the corner(角のあたり)」で「角を曲がったところに、すぐ近くに」と言う意味になります。強調の意を込めて「just」と一緒に使われることもあります。

「Like hell I will.(俺がすると思う?)」

「like I will」はそのまま訳すと「私がするみたいに」になりますが、ここでは「まるで私がそんなことするみたいに(しないよ)」と言ったニュアンスになります。「hell(地獄)」には様々な意味がありますが、「地獄」と言う意味以外で使われる場合には何かを強調するために使われることがほとんどです。今回も「しない」ということを強調しています。きれいな言葉ではないので、友人など親しい仲の人にしか使わないことをおすすめします。

「that is what we are here for.(私たちってそのためにここいるんじゃない)」

この「what」は「何」ではなく「~すること」と言う意味です。「what we are here for」で「私たちがそのためにここにいること(私たちがここにいる理由)」。「that is why we are here」と言い換えることができます。

「What else could it be.(それ以外ないでしょ)」

この「could」は仮定法の用法で、それが仮定してもあり得ないというニュアンスが込められています。「What else can it be」だと「その他にそれは何だと思いますか?」という単純な疑問としても受け取れますが、「could」だと「その他に一体何がある(その他にはない)」という否定のみになります。

「Allow me to demonstrate what I'm capable of.(僭越せんえつながら、この場で私の力量を証明させていただきます)」

「allow 人 to do」で「人が~することを許す」と言う意味ですが、それを自分に対して使うことで「私が~するのをお許しください」と許可をもらう表現になります(実際のところ「お許しください」というほど低く出るニュアンスはないですが)。日本語にするとちょうど「僭越ながら~させていただきます」というのに近いでしょう。よりカジュアルな言い方では「Let me do(私に~させてください)」があります。「demonstrate」は「実証する、実演する」という意味。「be capable of」で「~することができる」、「what I'm capable of」で「私ができること(私の実力)」となります。


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