第18話:One Day In Winter.(冬のある日)

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「今日も授業があるなんて信じられん!」

「It's already been the vacation in America.(アメリカじゃとっくに休みに入ってるわ)」

陽菜とシャーロットは俺の机の前まで来るとすぐに愚痴ぐちらした。帰る支度したくに手こずっていたら先に2人が俺のところまで来てくれたのだが、まさかいきなり不満を聞かされることになるとは思わなかった。

「Don't be mad. School is over. Let's talk about what we are gonna do now.(まあまあ、もう放課後なんだし。これからどうするか話そうよ)」

陽菜もシャーロットもたとえ何か嫌なことがあっても、未来のことについて考えるよう仕向けるとたいてい楽しそうにあれこれ思案してくれるのを俺は知っていた。

「You are right. We can't waste any more time! I'll go back home and have lunch. So, how about 2 pm at the station.(そうね。これ以上、時間を無駄にできないわ! 家に帰ってご飯食べたいから、2時に駅でどう?)」

「It's fine by me.(それでいいよ)」

俺に続いて陽菜もうんとうなずく。

「Great! and... how long are you gonna take to get ready?(よかった! それと……、帰る準備にどれだけ時間かけるの?)」

シャーロットがあきれ顔でいつまでも支度の終わらない俺に目をった。

「I study a lot. Studying a lot means lots of textbooks.(俺はたくさん勉強をする。たくさん勉強するにはたくさんの教科書が必要なんだ)」

「You were keeping them there, and Ogusu Sensei said she was going to check all the desks before the winter vacation. You are just paying for your laziness.(ずっと置き勉してたから、先生が冬休みの前にみんなの机チェックするって言って慌ててるだけのくせに。自業自得だわ)」

「I can leave them in your desk, and you'll get caught.(いっそシャーロットの机に置いてやろうかな)」

「No. I know you are going to keep them in the club room. I can tell her if you want me to that badly.(とか言ってどうせ部室に置くつもりなんでしょ。そんなに言って欲しいなら先生に言ってあげるわよ)」

「...You win.(……俺の負けだ)」

その会話の隣では陽菜が苦々しい笑顔を見せていた。

「今の会話、もしかして置き勉チェックがあるの?」

「さっきホームルームで先生が言ってたやろ。冬休み前にチェックするからみんなちゃんと持って帰ってねって」

「うわー、全然聞いてなかったよ。私けっこう置いとるんよなぁ」

「俺は部室に置くつもりだ」

「さては天才か!?」

シャーロットが呆れてため息をつく中、俺と陽菜は大量の教科書により丸くなったカバンを担いで部室に向かった。

「今日は私いない方がいい?」

部室ぶしつの本棚に教科書を入れながら陽菜がニヤリと笑う。シャーロットは靴箱のところで俺たちを待ってくれるそうで、ここにはいなかった。

「何でだよ」

そう言いながら少しドキリとしてしまったのが情けない。

「やっぱり特別な人と一緒に過ごしたいかなと思って」

「変な言い方をするな」

「えー、でも陽がどう思ってるのか気になるな」

その質問に真正面から答えるのが嫌で、できるだけはぐらかすことにした。

「陽菜もそういう話が好きなんやな」

「私も女の子やけんね。それにもし迷ってるならやっぱ応援したいやん?」

「応援ねぇ」

「なんか含みのある言い方するやん」

「人が心から応援するのって自分の叶わなかった願望を誰かが叶えようとしてる時らしいよ」

「へー、なにそれ」

「どっかで読んだ。……気がする」

「気かい!」

陽菜があははと笑った。

「でもその通りなのかもね」

「つまり、本当は陽菜が今日誰かと2人きりで過ごしたいと思ってる」

「うーん、そうなのかなぁ。確かにそういうのいいなとは思うけど!」

俺はさっさと荷物を棚にしまい終えて、軽くなったカバンを片手に再び立ち上がった。

「ま、ただ話をらしたかっただけやけんどっちでもいいよ」

「え?」

「じゃあ行こっか」

「うわぁ、何か悔しい……」

納得いかない様子の陽菜を横目に、俺は堂々と部室ぶしつをあとにした。

2時になるちょっと前。待ち合わせ場所に到着すると、そこにはシャーロットしかいなかった。

「そうかぁ。うん、バイバイ」

彼女はその言葉を最後に陽菜との通話を終える。それからすっかり肩を落として、何かを訴えるような目でこちらを見た。

「...What did she say?(……何て言ってた?)」

返ってくる答えはなんとなくわかっていたが、とりあえずたずねてみる。

「She said, "I'm sorry. I'll join you later. Please go without me."(ごめん、あとで合流するから2人で先に行ってて、だって)」

不満の表明か、彼女は陽菜の口調を真似た。

「She isn't here with us on such a day. What a shame.(こんな日に陽菜がいないなんて残念だなぁ)」

むしろこんな日だからこそ彼女は来なかったのではないか、と思ってしまう。

先ほど部室ぶしつに教科書を置き終わって職員室に鍵を返しに向かっている途中、陽菜は妙なことを言ってきた。陽はまだ恋愛とか考えてないんかもね。やけど、試しに考える機会があってもいいんやない?

俺はあまり深く考えずにそうだなと答えた。答えてしまったのだ。

「Something tells me she'll join before dinner.(きっと夕食前には来るだろう)」

「Yeah, she has to. We are gonna have a party tonight.(うん、そうじゃないと困るわ。夜はパーティーなんだから)」

パーティーといっても俺と陽菜がシャーロット家にお邪魔して、彼女の家族と一緒にみんなでちょっとした夕食会を開こうというごく一般的なものだけど、シャーロットはとにかく今朝から張り切っていた。

俺たちは早めに集まって街へ行き、パーティーに使う食材やら何やらを買う予定だったのだ。しかし、どうやら陽菜は遅れて来るつもりらしい。

「We should go anyway. It's cold outside.(とにかく行こう。外にいるのは寒い)」

今日の最低気温は零度れいど近くになるそうだ。それに渇いた風がビュービュー吹き付けるからたまらない。改めて冬本番の真っただ中にいることを痛感させられる。

「Where do you wanna go?(どこ行きたい?)」

「I can go anywhere as long as it's warm. Let's get inside.(暖かければどこでも。とりあえず中に入ろう)」

俺たちは最寄りの商業施設に逃げ込んだ。

中はとても暖かくて鼻や耳や手に熱が戻ってくる。通路に沿って並ぶ店舗は今月になって飾り付けられた装飾で綺麗きれいに彩られていて、天井からは陽気な音楽が流れてくる。

ただ、あたりを歩く人たちはその多くが幸せそうな顔をしたカップルで、しかも彼らはすれ違うたびに物珍しそうな、祝福するような目でこちらを見てくるから、今度は必要以上に体に熱がこもるのを感じた。

「Do you have anything to buy?(何か買いたいものある?)」

シャーロットが何事もないかのように話し掛けてきた。まるでこの状況を気にしているのが俺だけだと言われているみたいで少し悔しくなる。

「Not really. Let's just look around.(いや、特には。とりあえず見て回ろうか)」

まだ時間にはかなり余裕がある。ファッション系の店舗がほとんどなこともあって、俺たちは服を見ていくことにした。店先にはセールだセールだという看板をよく目にしたけど、それでも値の張る冬物は高校生にはなかなか手が出ない。

「How does this look?(これ似合ってる?)」

毛皮の白い帽子をかぶりながらシャーロットが尋ねてくる。

「It looks good on you.(うん。似合ってるよ)」

彼女は嬉しそうに鏡を見つめる。

「You should try this!(陽はこれ被ってみて!)」

そう言って近くにあった紺色のニット帽を被せようとしてきた。

「Do you really think this looks good on me?(本当にこれ似合うと思うのか?)」

「Of course. It'll look perfect. Just stay still and let me put it on!(もちろんよ。絶対似合うからじっとしてこれを被らせて!)」

乗り気はしなかったけど、そこまでいうならと大人しく頭を下げる。シャーロットが帽子を被せて、俺はその位置を微妙に調整しながら鏡の前に立った。

「...What do you think?(……どう思う?)」

「Sorry, I was wrong.(ごめんなさい、そうでもなかったわ)」

「What the..., I'll never let you choose!(この……、もう二度と選ばせん!)」

「Oh no, please don't get mad.(あらら、そんなに怒らないで)」

それから俺たちはビルの中にあったカフェで時間をつぶすことにした。店内にはやっぱり多くの男女が対で座っていて、努めて平静を保とうとしても、どうしても周りの目が気になってしまう。

「I've been wanting to try this boba!(このタピオカ、ずっと飲んでみたかったの!)」

容器の底には大きな黒粒がたくさんあって、中層にはイチゴミルクのような薄ピンクの液体、上にはホイップクリームがかかっている。何を頼んだかは聞いていないが期間限定のものだそうだ。シャーロットはご満悦の表情でストローに口をつける。

「Girls like "limited", don't they?(女の人は“限定”が好きだよな)」

「I think boys like too. This one is on sale only for a week and today is the last day!(男の子だって好きよ。特にこれは1週間しか売られなくて、今日が最終日だったんだから)」

「I'm glad you got it then.(買えてよかったな)」

「Yeah! Do you wanna drink? It's good.(うん! 陽も飲む? おいしいよ)」

彼女は飲んでいたタピオカを俺の前に差し出す。

「…………」

恥ずかしくて少し迷った。だけど、結局、手を伸ばして一口もらうことにした。

「This is good. Much better than I thought.(うまい。思ってたよりずっとおいしい)」

「Whatever it is, "limited" makes it better.(何であっても“限定”がつけばおいしく感じるのよ)」

勝ち誇った顔の彼女に俺はつい笑い声を上げる。

「Maybe you are right.(その通りかもな)」

通知が来たのか、ふとシャーロットはスマホを確認するとこちらに顔を上げた。

「What do we do now? Hina said she would arrive in an hour.(これからどうしよっか? 陽菜はあと1時間で着くって)」

「Let me think.(うーん)」

その時、俺のスマホに電話がかかってきた。画面を確認すると予想通り相手は陽菜だ。

「よ、うまくやってるかい?」

電話がつながると同時に、憎らしくも、のんきな声が聞こえてきた。

「お前やっぱりわざと……」

「ごめんごめん。それよりシャーロットにはあと1時間で着くって言っちゃったけど大丈夫そう?」

「大丈夫って何が?」

「考えるきっかけはできたかなって」

「特になし」

きっぱりと答える。

「じゃあ1つアドバイスしよう」

「いやな予感がする」

「今はカフェで2人話しとるんやろ?」

「うん」

「シャーロットに好きな人がいるかきいてみて!」

心臓が大きく脈を打った。

「そんなこといきなり聞けるわけ」

「私に言われたって言っていいから!」

俺の言葉はさっさとさえぎられた。

「とにかくあと1時間やけんね。嫌ならせんでいい、けどもし聞いてもいいかなって思ってるなら、まあいいかで終わらせるのはもったいないよ!」

恋愛。それについてこれまでどうこう考えたことはなかった。というよりむしろ、考えないようにしていたと言った方が適切かもしれない。

「……そもそも」

「ん?」

「恋愛というものの、あの、相手は自分のことをどう思っているのかっていう、まるで暗闇の中をどこまでも手探りで歩き続けるような苦悶くもんに耐えられない」

「は?」

彼女の痛烈な一言で、俺は少し冷静になった。

「ごめん、回りくどかった。つまり、要は、する必要のないがっかりをしたくない」

「それも経験だよ。陽はちょっとくらいがっかりする必要があるでしょ」

「…………」

「するなら今だよ!」

「……わかった、わかったよ」

陽菜は嬉しいのかふふと笑った

「それじゃあ頑張って!」

陽菜との通話が終わる。普段、人間関係に横から口を出されるのは好きじゃないけど、今回に限っては別に嫌だと感じないのは、それが陽菜だからだろうか。それとも俺は本当に……。

「Is it alright?(大丈夫?)」

電話のやり取りが気になったのか、シャーロットがたずねてきた。

「Yeah, it's nothing.(うん、大丈夫)」

「What shall we do.(どうしましょっか)」

「Chat?(雑談は?)」

彼女は面白そうに、何か悪戯いたずらでもたくらむような表情でこちらを見つめてくる。

「You have something to talk about.(話したいことがあるのね)」

薄々思っていたけど、今日はこうして余裕を見せるシャーロットの様子がずっと気に入らなかった。だから、咄嗟とっさに口から出そうになった「It's not like that.(そんなんじゃないよ)」を何とか胃の中に押し込んで、いい加減、俺は攻勢の一手を繰り出すことに決めた。

「Do you have a crush on someone?(シャーロットは誰か好きな人いるのか?)」

シャーロットは驚いて背筋を伸ばす。俺はちょっとした仕返しが成功したことに心の中でガッツポーズをした。

「Is that, is that what you wanna to talk about?(そ、それが陽が話したいことなの?)」

「Yeah, why not.(もちろんだ)」

俺はほとんど自棄やけになって堂々と答えた。それまであった緊張も胸の高鳴りも、もはや一周して逆に気持ちが高揚している。

「Someone I have a crush on...(私の好きな人……)」

シャーロットはしばらく悩んだあと、顔を赤らめて答える。

「I think I do.(いると思う)」

俺は引き続き気丈にふるまう一方、テーブルの下で震える足を必死に手で押さえつけていた。

「Is he...(それは……)」

「But, I don't know for sure. Maybe I don't.(でも、本当にそうなのかわからない)」

「You don't know what it's like to have a crush on someone?(誰かを好きになるのがどんなものかわからないってこと?)」

「Yeah, I wish he would just confess to me.(うん。その人が私に告白してくれたらいいのに)」

「You would say yes then?(そしたらOKするの?)」

「I think I would.(すると思うわ)」

「But then, that means you do have a crush, doesn't it?(でも、それなら好きってことなんじゃ)」

彼女は答えるまでの猶予ゆうよを稼ごうとするかのようにタピオカを一口飲んでから口を開いた。

「I don't have a courage to admit this feeling is the one and take an action myself.(この気持ちがそうだと認めて自分から行動する勇気がないのよ)」

「Courage to admit...?(認める勇気……?)」

「What if it turns out to be wrong. I end up hurting him. I'm afraid of that.(もしやっぱり違ったってなったらどうしよう。そしたら相手を傷つけちゃうよ。そうなるのが怖いの)」

彼女の言うことを俺はなんとなく理解できる気がした。

好きと言う感情が異性としてなのか人としてなのかわからない、好きだと思っていたけどいざ付き合ってみたら冷めてしまった。そういうことは起こってしまう。

自分はなぜ相手のことが好きなのか、その究極の原因が論理的なものじゃなくて感情によるのだから、心に宿やどる熱をどこまで信じていいのかわからなくなる。

自分の気持ちを信頼することは意外に難しいことだ。

「I didn't think you would say that.(そんな答えが出てくるとは思わなかったよ)」

「What did you think I would say?(何て答えると思ったの?)」

シャーロットが面白がるような表情を見せる。俺は頭をひねるとわざとらしく背筋を伸ばして答えた。

「Yeah! I do have a crush on someone and I'm gonna tell him my feelings now!(ええ、もちろん好きな人がいるわ! そして今から告白するの!)」

「Ahaha, I wish I were that simple. What about you?(あはは、そんなに単純だったらいいのに。陽はどうなの?)」

「Having a crush on someone? I'm still thinking about it.(誰かを好きかってこと? まだ考え中なんだよな)」

陽菜に言われたことを思い出しながら答える。

「It isn't something you think, it's something you feel. Thinking won't change your heart!(それは考えることじゃなくて感じることよ。考えても気持ちが変わる訳じゃないわ!)」

彼女はいたずらっぽい笑顔を仕向けてくる。

「So, tell me. How do you feel for her.(だから、教えてよ。陽はその人のことどう思ってるの?)」

これにはさすがにむずがゆくて耐えかねた。

「I, I can't say that now. You tell me first!(い、今は言えない。シャーロットから言ってくれ!)」

「Ahaha, alright I can tell you.(あはは。いいわ、教えてあげる)」

俺の弱々しい挙動を見て自信を取り戻したらしく、彼女は顔を赤らめながらもかつての俺のように堂々としゃべる。

「He is(その人は)」

「Wait!(待って!)」

俺はすぐに考え直して待ったをかけた。シャーロットからそれを聞いたとして、お返しに今の俺が彼女に正直に自分の気持ちを打ち明けることはとてもできそうもない。

「...Let's stop here for now.(……今はここまでにしよう)」

彼女はふふふと嬉しそうに笑う。

「If you say so.(陽がそういうなら)」

結局、この会話において主導権を握っていたのはシャーロットだった。俺はまたしても彼女から差し出されたタピオカの容器を苦々しい思いで受け取るとグイと一口、のどに流し込んだ。

俺たちは少し早めにカフェを出て、駅前の公園に向かった。

公園の中には敷地のはしの方に大きな木が植えられている。それには赤や青などカラフルに光るイルミネーションライトに加えて、リボンやら球体の装飾品やらが豪華に飾り付けられている。

今の時期、この木は待ち合わせ場所として指定されることもあって、すでに周りには若者が5,6人立っていた。2人で木の前に立つと今日が特別な日であることを改めて実感させられる。

「This is so beautiful!(とってもきれいね!)」

シャーロットが嬉しそうに笑いかける。俺はその表情がかわいいなと思った。

「It was so nice spending time with you today.(今日、一緒に過ごせてよかった)」

「Same here.(私もよ)」

俺がニコリとすると向こうもニコリと笑い返してくれた。

その時、ほほに何かひんやりとしたものが当たった。

「It's snowing!!(雪が降ってる!)」

シャーロットの声に反応して顔を上げると、空から小さな白い結晶がぽつりぽつりと降りてくるのがわかった。

「Haha, it's snowing now. Perfect timing.(はは、このタイミングで雪が降るなんて)」

俺とシャーロットだけじゃなく、周りにいた人たちもこの降雪に感動の声を上げている。

「遅れてほんとごめん!」

やや高くて元気のいいその声に振り返ると陽菜が両手を合わせて立っていた。実は彼女とここで待ち合わせをしていたのだ。

「まったくだよ」

俺は思いっきりしかめっ面をして見せた。

「あはは、ごめんね」

そして耳元でこっそり「どうだった?」と訊いてくる。

「まあ、楽しかったよ」

「もっと詳しく!」

「今度な」

「もったいぶらないでよぉ」

彼女は不満そうに口をとがらせる。

「Hey, let's go buy food!(それじゃあ、食べ物を買いに行きましょ!)」

シャーロットの言葉に俺もうんとうなずく。だけど、陽菜は首を横に振った。

「I want to take a picture before that!(その前に写真撮りたい!)」

「Oh, that sounds great!(それいいわね!)」

必然的に一番手の長い俺にスマホが渡され、しぶしぶ自撮りモードで3人の姿を映す。早速、シャーロットの指導が始まった。

「Little bit down.(もうちょっと下)」

「Here?(ここ?)」

「The tree isn't in. Up a bit.(木が入ってないわ。少し上げて)」

「Like this?(こんな感じ?)」

「Yeah, now you tilt it down.(そうそう、次はスマホを下に傾けて)」

「What a pain in the neck!(めちゃくちゃ面倒なんだけど!)」

「Stop! Good, keep it there!(ストップ! いいわ、そのままそこで!)」

「What do we say?(なんて言う?)」

陽菜がシャーロットにたずねた。

「You mean "call"? Let's say what day this is!(掛け声のこと? 今日が何の日か言いましょ!)」

「OK!(わかった!)」

「Alright then, I'm gonna take a shot. One two and three.(それじゃあ撮るよ。さん、に、いち)」

みんなで一斉に口を開く。

「Merry Christmas!!(メリークリスマス!!)」

それと同時に俺はシャッターボタンを押した。

ストーリーで使われた英語表現

※ストーリー中に使用された英語表現の解説をしていきます(ここでの解説はあくまでもご参考程度にお読みください)。本作品のストーリーとは無関係なので、興味がないという方や解説不要という方は飛ばしていただいて構いません!

18話ではそれほど難しい表現はなかったと思います。そこで今回は文法の留意点だけ簡単に述べていきます!

まずは「But then, that means you do have a crush, doesn't it?(でも、それなら好きってことなんじゃ)」を取り上げます。2人がカフェで話している時に陽が言ったセリフです。

「you do have」と動詞が2つくっついていて混乱するかもしれませんが、これは強調の用法です(厳密にはこの「do」は助動詞なので動詞が2つくっついているわけではありません)。動詞の前に「do」を置くことで動詞の意味を強調しています。訳にすると「確かに、ちゃんと、しっかり」といった感じです。

場面としては反論の意味を込めて使うことが多いように感じます。

「He left his textbook home again!?(彼はまた家に教科書忘れたの?)」→「Yes, but he does have a textbook. He borrowed.(ええ、でも彼は確かに教科書を持っているわ。借りたの)」

「You must have cut school.(あなた絶対、学校サボったでしょ)」→「I did go to school.(ちゃんと行ったよ)」

他にも「But then, that means you do have a crush, doesn't it?」には付加疑問文という文法が使われています。

文末にある「~, doesn't it?」がそれで、「~ですよね?」と相手に念を押したり同意を求めたりする意味になります。

付加疑問文の作り方は、動詞を否定の形にして(否定文の場合は肯定の形)、文末に動詞→主語の順番で置きます。「I'm~」の場合は「amn't」という表現がないため文末は「aren't」になり、固有名詞や指示語、複数のものは「he」「they」「it」などの代名詞に変わります。

「I'm good at study, aren't I?(私、勉強はできるじゃない?)」

「He isn't a student, is he?(彼は生徒じゃないよね?)」

「She likes animals, doesn't she?(彼女は動物が好きだよね?)」

「John went to the library, didn't he?(ジョンは図書館へ行ったよね?)」

「John and Mary didn't go to the museum, did they?(ジョンとメアリーは博物館へ行かなかったよね?)」

「Some people like being alone, don't they?(一人でいるのが好きな人もいるじゃない?)」

「That means you like him, doesn't it?(それって彼のことが好きってことじゃない?)」

「There is something wrong, isn't there.(何か悪いことがあるんですよね?)」

「Let's go swimming, shall we?(泳ぎに行きませんか?)」

「Nobody knows about it, do they?(誰もこのことを知らないんですよね?)」

また、付加疑問文の質問に対する答え方には注意が必要です。

日本語の場合「彼は生徒じゃないよね?」の質問に対して、生徒でなければ「はい、違います」と答えますが、英語では「He isn't a student, is he?」と訊かれて、生徒であれば「Yes, he is.(はい、そうです)」、生徒でなければ「No, he isn't.(いいえ、違います)」と答えます。

次に話の終盤に出てくる「It was so nice spending time with you today.(今日、一緒に過ごせてよかった)」を見ていきます。実はこれと「It is so nice to spend time with you today.」とは微妙に意味が異なります。

そもそも「~ing」の形である動名詞と「to do」の形である不定詞は、それが過去を表すのか未来を表すのかでどちらを使うかが変わります。「~ing」には過去のこと、「to do」には未来のことを指す意味が含まれています。

「(It is)so nice to spend time with you」であれば「あなたと一緒に過ごすなんてとても素敵です」となり、相手と出会った時に言うセリフです。対して「(It was)so nice spending time with you」は一緒に過ごしたのは過去の話であり、別れ際に「あなたと一緒に過ごせてとても素敵だった」と伝えるものになります。

「He forgot to go to the library.(彼は図書館へ行くのを忘れた)」→図書館へは行ってない。場面としては図書館で本を借りる予定だった、など。

「He forgot going to the library.(彼は図書館へ行ったのを忘れた)」→図書館へは行った。場面としては昨日したことをかれて伝えたことにれがあった、など。

ちなみに過去/未来の区別ではないですが、「~ing」と「to do」で意味が変わる動詞を合わせて紹介しておきます。

「I try to talk to her.(彼女と話そうとする)」

「I try talking to her.(試しに彼女と話してみる)」

「I stop to think about it.(それについて考えるために立ち止まった)」

「I stop thinking about it.(それについて考えるのをやめた)

動名詞と不定詞、ある時はどちらも似た働きをしますが、ある時はまったく異なる意味を持つこともあるので注意してください!


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